より良き教育を求めて ちからのブログ

30年の高校教師の経験から学校・教師・教育について考える

『日本霊異記』に感ずる

『日本霊異記』の正称は『日本国現報善悪霊異記』である。「現報」とは、現世の行為に対して現世においてその報いをうけること、「霊異」とは、人知でははかり知れないこと、という意味である。 筆者・景戒(きょうかい)が、人は自分の行為によって必ずその…

「無名抄」の数寄者

「無名抄」(久保田淳訳注 角川ソフィア文庫)を読んだ。私には「無名抄」といえば、「方丈記」の作者・鴨長明の歌論書(和歌に関する理論および評論の書)というくらいの知識しかなかった。しかし読んでみると、「歌論的部分と肩のこらない随想的乃至は説話…

広がらない正しい漢字の採点基準

7月11日のデイリー新潮で「先生の採点は厳しすぎ? 漢字テストの『とめ、はね問題』 文科省に聞くと意外な見解が」という記事が発信された。そこに書かれていることは、このブログ「より良き教育を求めて」、および私のホームページ「丸山力 漢字の採点基準…

高校の非常勤講師が残業代求める

静岡県立掛川西高校に勤務する非常勤講師・岡野さん(74)が、「実際に教室で授業をする時間以外にも、試験の作成や採点、授業の準備などで月40時間以上を費やし、ほぼ全てが無給となっている」と主張して、3月30日に静岡県教育委員会に残業代の支給を求めて…

給特法の抜本的な見直し

現役高校教員や大学教授などでつくる有志の会が、3月16日に給特法の抜本的な改善を求める80,345筆のネット署名と要望書を文部科学省に提出した。給特法により時間外勤務を命じることができるのは、(1)生徒の実習、(2)学校行事、(3)職員会議、(4)災害…

高校の現状-新潟県と東京都

『教師の仕事がブラック化する本当の理由』(喜入克 草思社)を読んだ。ブラック化する理由についてはなるほどと思ったが、そのことについてはここでは書かない。 私がこの本を読んで一番に感じたことは、新潟県と東京都の高校の違いである。 まず生徒の違い…

漢字の字体について

漢字の字体(文字の骨組)は「常用漢字表の字体・字形に関する指針」の第1章常用漢字表「(付)字体についての解説」の考え方で「同じ文字として様々に肉付けされた数多い個別の文字の形状それぞれから抽出される共通した特徴であり、文字の具体的な形状を背…

学校・教員を取巻く問題・・非常勤講師

公立学校では非正規雇用の教員が増えていて、その数は公立学校で5~6人に1人に上るという。私は高校の教員であったが、確かに勤務した高校の全てに常勤の講師と非常勤講師がいた。 私も定年後、1年再任用で働き、次の年に非常勤講師をした経験がある。再任用…

北国街道 柏崎~鯨波を歩く

芭蕉は元禄2年7月5日(新暦1689年8月19日)に出雲崎を発ち、柏崎の天屋弥惣兵衛に宿泊する予定であったが、面白くないことがあって天屋に泊るのを止めて先に進み、鉢崎の「たわらや」に宿泊した。 「曾良旅日記」には5日のことが、次のように書かれている。 …

漢字の正しい採点を広めるために必要なこと

日本漢字学会が、2021年3月~4月に実施した「漢字の書き方の指導についてのア ンケート集計」(日本漢字学会のホームページからダウンロードできる)と、集計結果に基づく座談会の記事「どうする?漢字の〇と✖」(日本漢字学会の機関誌『漢字之窓』第5号に掲…

なぜ細部にこだわる漢字指導がなくならないのか

朝日新聞EduAで、今月の14日、15日、16日と三日連続して、漢字教育について専門家に意見を聞いた記事が配信された。 14日の記事では阿辻哲次氏(日本漢字学会長、京都大学名誉教授)が次のように考えを述べている。 「辞書や教科書に印刷されている通りに書…

教員不足と最低倍率の教員採用試験

学校では若い世代の割合が増えて産休・育休の取得者が増加し、病気の休職者も多くなって、代わりの教員が見つからずに欠員が生じている。その実態をつかもうと文科省は初めて全国調査を実施し、結果を先月31日に公表した。それによると昨年(2021)4月の年…

試験問題漏洩、高校国語の選択科目

昨年12月に奈良県立御所実業高校の男性教諭(57)が、テストで出題が予定されていた問題を事前に生徒に流出させたとして、停職6か月の懲戒処分を受けた。教諭は10月に、2学年の2学期中間テストに出題予定だった世界史の試験問題を同僚から借り、同じ内容の「…

「授業準備1コマ5分」

10月1日にさいたま地裁(石垣陽介裁判長)で、埼玉県の公立小学校教員の田中まさお(仮名)さんが、時間外労働に対して残業代が支払われないのは労働基準法違反だとして、県に未払い賃金の支払いと国家賠償を求めた裁判の判決がでた。請求は棄却されたが、裁…

漢字指導における基本、応用

漢字の細部にこだわる、誤った漢字指導がなくならない。そのことについて書いてきて、誤った漢字指導を擁護する人が使う言葉(用語など)について気づいたことがあった。そこで前回のブログで漢字の「字体」と「字形」を取り上げた。今回は漢字指導の「基本…

漢字の字体と字形

なぜ漢字の細部にこだわる、誤った漢字指導がなくならないのだろうか。漢字についてのブログを書いてきて、いくつか気づいたことがある。それは言葉(用語など)が正しく理解されていなかったり、誤った思い込みがあったりすることが、原因になっているので…

漢字を知らない議員同士の国会討論ー参議院文教科学委員会「学校教育における漢字指導の在り方」

ネットで「漢字の採点」や「漢字の正誤」などと検索すると、平成28年2月29日に出された「常用漢字表の字体・字形に関する指針」について、同年3月10日に参議院で赤池誠章議員と馳浩文部科学大臣のあいだでなされた討論を記録した「学校教育における漢字指導…

未だに続くめちゃくちゃな漢字教育(2)

7月5日に出版された「AERA」(朝日新聞出版)に、「厳しい採点には家庭でフォロー」という記事が載っていた。(ネットでも紹介されている。)その記事の初めの部分を紹介する。 「小学校のテスト、採点が厳しすぎじゃない?」 保護者の間で毎年のように…

三好京三『俺は先生』

三好京三の『俺は先生』(昭和57年 文藝春秋)を読み、感じたことを書いてみたい。 三好京三は昭和6年(1931年)岩手県に生まれ、平成19年(2007年)に亡くなっている。直木賞を受賞した『子育てごっこ』が特に有名である。三好は助教諭として種市町(現洋野…

未だに続くめちゃくちゃな漢字教育

西日本新聞(4月5日、ウェブ版)の「0点は厳しすぎ?小1『とめ、はね、はらい』で✖ 文科省の見解は」という記事で、「習字のような「とめ、はね、はらい」ができていないと、漢字ドリルは全てやり直し。テストは0点ー。」にする教員がいて、保護者から「厳し…

北国街道・米山三里を歩く

先月24日と31日に、北国街道の米山三里と呼ばれる道を歩いてきた。米山(標高993m)の山脚が海岸までのびて、断崖となり峠となった難所である。 なぜ米山三里を歩こうと考えたかというと、私は数年前から芭蕉が奥の細道の旅で歩いた新潟県内の道を訪ねている…

折節の移りかはるこそ(徒然草 第19段)

私は徒然草の中では、第19段「折節の移りかはるこそ、ものごとにあはれなれ」が一番好きである。俳人で古今伝授を受け継いだ古典学者でもある松永貞徳は、この19段を絶賛し、徒然草の注釈書「なぐさみ草」で、兼好なら「源氏物語」のような物語もかけるだろ…

「卒業証書」

現在、10都府県に緊急事態宣言が出され、コロナ禍にある。 1年ほど前の昨年2月27日には、新型コロナウイルスの感染拡大により、安倍首相が3月2日から春休みまで全国の小中高に一斉臨時休校を要請した。そのために卒業式を最小限の人数に限って開催する学校や…

2021大学入学共通テスト(国語)

初の大学入学共通テストが16日、17日に実施された。大学入学共通テストは大学入試センター試験の後継として初めて実施されたものであるが、16日に実施された国語は記述式問題の実施が見送られた(2019年12月に萩生田文科大臣が見送りの発表をした)せいもあ…

「常用漢字表の字体・字形に関する指針」の修正について

平成28年2月29日に、文化審議会国語分科会が「常用漢字表の字体・字形に関する指針」を報道発表したが、これは当日(平成28年2月29日)開催された第60回国語分科会に資料として提出された案と同じものである。国語分科会と報道発表が同日だったので、国語…

ネット上の「常用漢字表の字体・字形に関する指針」について

平成28年(2016年)2月29日に文化審議会国語分科会から、「常用漢字表の字体・字形に関する指針」が出された。これが現在の日本における手書き(筆写)の漢字の正誤基準である。 私は平成28年4月30日に三省堂から書籍として出版されるとすぐに購入した。目…

教育勅語について

教育勅語は3年前(2017年)、森友学園の幼稚園児たちが暗唱していたことで、再び注目された。このブログでは、教育勅語の内容については触れずに(教育勅語の解説書、いわゆる教育勅語衍義書は300冊以上出版されたという)、教育勅語の本文に使われている漢…

松尾芭蕉「銀河の序」と大星哲夫

連日の猛暑には参ってしまいます。 コロナがなければ、今年は友人と鳴子温泉から山刀伐峠、尾花沢、立石寺を訪ねてみようと思っていましたが、取りやめて9月に弥彦から寺泊、出雲崎という近場を訪ねることにしました。その下調べをしているうちに、「銀河の…

漢字の細部にこだわった採点は戦前にもあった

「木」(木・木偏)の縦画をはねると✖、というような細部にこだわった採点は、戦後、それも受験戦争が激しくなった昭和40年代に始まると言われることが多い。受験生の学力レベルが上昇し、以前と同じでは差がつかなくなったので、有名私立中学の入試でそのよ…

常用漢字表について

現行の常用漢字表を2代目の常用漢字表だと思っている人が多いだろうが、実は大正12年と昭和6年にも同じ常用漢字表という名称で官報に漢字表が公示されているので、現行の常用漢字表は4代目の常用漢字表ということになる。4つの常用漢字表は次の通りである…