古典を読む
「とはずがたり」をご存じだろうか。鎌倉中期の宮廷で、後深草院(第89代天皇、在位1246~1259)に仕えて、「二条」と呼ばれた女性の回想自伝である。 作者は院の愛を受けている間に、二人もしくはそれ以上の男性とも関係を持ち、少なくとも院を含めて三人の…
『日本霊異記』の正称は『日本国現報善悪霊異記』である。「現報」とは、現世の行為に対して現世においてその報いをうけること、「霊異」とは、人知でははかり知れないこと、という意味である。 筆者・景戒(きょうかい)が、人は自分の行為によって必ずその…
「無名抄」(久保田淳訳注 角川ソフィア文庫)を読んだ。私には「無名抄」といえば、「方丈記」の作者・鴨長明の歌論書(和歌に関する理論および評論の書)というくらいの知識しかなかった。しかし読んでみると、「歌論的部分と肩のこらない随想的乃至は説話…
芭蕉は元禄2年7月5日(新暦1689年8月19日)に出雲崎を発ち、柏崎の天屋弥惣兵衛に宿泊する予定であったが、面白くないことがあって天屋に泊るのを止めて先に進み、鉢崎の「たわらや」に宿泊した。 「曾良旅日記」には5日のことが、次のように書かれている。 …
先月24日と31日に、北国街道の米山三里と呼ばれる道を歩いてきた。米山(標高993m)の山脚が海岸までのびて、断崖となり峠となった難所である。 なぜ米山三里を歩こうと考えたかというと、私は数年前から芭蕉が奥の細道の旅で歩いた新潟県内の道を訪ねている…
私は徒然草の中では、第19段「折節の移りかはるこそ、ものごとにあはれなれ」が一番好きである。俳人で古今伝授を受け継いだ古典学者でもある松永貞徳は、この19段を絶賛し、徒然草の注釈書「なぐさみ草」で、兼好なら「源氏物語」のような物語もかけるだろ…