より良き教育を求めて ちからのブログ

30年の高校教師の経験から学校・教師・教育について考える

国語・漢字関連

広がらない正しい漢字の採点基準

7月11日のデイリー新潮で「先生の採点は厳しすぎ? 漢字テストの『とめ、はね問題』 文科省に聞くと意外な見解が」という記事が発信された。そこに書かれていることは、このブログ「より良き教育を求めて」、および私のホームページ「丸山力 漢字の採点基準…

漢字の字体について

漢字の字体(文字の骨組)は「常用漢字表の字体・字形に関する指針」の第1章常用漢字表「(付)字体についての解説」の考え方で「同じ文字として様々に肉付けされた数多い個別の文字の形状それぞれから抽出される共通した特徴であり、文字の具体的な形状を背…

漢字の正しい採点を広めるために必要なこと

日本漢字学会が、2021年3月~4月に実施した「漢字の書き方の指導についてのア ンケート集計」(日本漢字学会のホームページからダウンロードできる)と、集計結果に基づく座談会の記事「どうする?漢字の〇と✖」(日本漢字学会の機関誌『漢字之窓』第5号に掲…

なぜ細部にこだわる漢字指導がなくならないのか

朝日新聞EduAで、今月の14日、15日、16日と三日連続して、漢字教育について専門家に意見を聞いた記事が配信された。 14日の記事では阿辻哲次氏(日本漢字学会長、京都大学名誉教授)が次のように考えを述べている。 「辞書や教科書に印刷されている通りに書…

試験問題漏洩、高校国語の選択科目

昨年12月に奈良県立御所実業高校の男性教諭(57)が、テストで出題が予定されていた問題を事前に生徒に流出させたとして、停職6か月の懲戒処分を受けた。教諭は10月に、2学年の2学期中間テストに出題予定だった世界史の試験問題を同僚から借り、同じ内容の「…

漢字指導における基本、応用

漢字の細部にこだわる、誤った漢字指導がなくならない。そのことについて書いてきて、誤った漢字指導を擁護する人が使う言葉(用語など)について気づいたことがあった。そこで前回のブログで漢字の「字体」と「字形」を取り上げた。今回は漢字指導の「基本…

漢字の字体と字形

なぜ漢字の細部にこだわる、誤った漢字指導がなくならないのだろうか。漢字についてのブログを書いてきて、いくつか気づいたことがある。それは言葉(用語など)が正しく理解されていなかったり、誤った思い込みがあったりすることが、原因になっているので…

漢字を知らない議員同士の国会討論ー参議院文教科学委員会「学校教育における漢字指導の在り方」

ネットで「漢字の採点」や「漢字の正誤」などと検索すると、平成28年2月29日に出された「常用漢字表の字体・字形に関する指針」について、同年3月10日に参議院で赤池誠章議員と馳浩文部科学大臣のあいだでなされた討論を記録した「学校教育における漢字指導…

未だに続くめちゃくちゃな漢字教育(2)

7月5日に出版された「AERA」(朝日新聞出版)に、「厳しい採点には家庭でフォロー」という記事が載っていた。(ネットでも紹介されている。)その記事の初めの部分を紹介する。 「小学校のテスト、採点が厳しすぎじゃない?」 保護者の間で毎年のように…

三好京三『俺は先生』

三好京三の『俺は先生』(昭和57年 文藝春秋)を読み、感じたことを書いてみたい。 三好京三は昭和6年(1931年)岩手県に生まれ、平成19年(2007年)に亡くなっている。直木賞を受賞した『子育てごっこ』が特に有名である。三好は助教諭として種市町(現洋野…

未だに続くめちゃくちゃな漢字教育

西日本新聞(4月5日、ウェブ版)の「0点は厳しすぎ?小1『とめ、はね、はらい』で✖ 文科省の見解は」という記事で、「習字のような「とめ、はね、はらい」ができていないと、漢字ドリルは全てやり直し。テストは0点ー。」にする教員がいて、保護者から「厳し…

「卒業証書」

現在、10都府県に緊急事態宣言が出され、コロナ禍にある。 1年ほど前の昨年2月27日には、新型コロナウイルスの感染拡大により、安倍首相が3月2日から春休みまで全国の小中高に一斉臨時休校を要請した。そのために卒業式を最小限の人数に限って開催する学校や…

「常用漢字表の字体・字形に関する指針」の修正について

平成28年2月29日に、文化審議会国語分科会が「常用漢字表の字体・字形に関する指針」を報道発表したが、これは当日(平成28年2月29日)開催された第60回国語分科会に資料として提出された案と同じものである。国語分科会と報道発表が同日だったので、国語…

ネット上の「常用漢字表の字体・字形に関する指針」について

平成28年(2016年)2月29日に文化審議会国語分科会から、「常用漢字表の字体・字形に関する指針」が出された。これが現在の日本における手書き(筆写)の漢字の正誤基準である。 私は平成28年4月30日に三省堂から書籍として出版されるとすぐに購入した。目…

教育勅語について

教育勅語は3年前(2017年)、森友学園の幼稚園児たちが暗唱していたことで、再び注目された。このブログでは、教育勅語の内容については触れずに(教育勅語の解説書、いわゆる教育勅語衍義書は300冊以上出版されたという)、教育勅語の本文に使われている漢…

松尾芭蕉「銀河の序」と大星哲夫

連日の猛暑には参ってしまいます。 コロナがなければ、今年は友人と鳴子温泉から山刀伐峠、尾花沢、立石寺を訪ねてみようと思っていましたが、取りやめて9月に弥彦から寺泊、出雲崎という近場を訪ねることにしました。その下調べをしているうちに、「銀河の…

漢字の細部にこだわった採点は戦前にもあった

「木」(木・木偏)の縦画をはねると✖、というような細部にこだわった採点は、戦後、それも受験戦争が激しくなった昭和40年代に始まると言われることが多い。受験生の学力レベルが上昇し、以前と同じでは差がつかなくなったので、有名私立中学の入試でそのよ…

常用漢字表について

現行の常用漢字表を2代目の常用漢字表だと思っている人が多いだろうが、実は大正12年と昭和6年にも同じ常用漢字表という名称で官報に漢字表が公示されているので、現行の常用漢字表は4代目の常用漢字表ということになる。4つの常用漢字表は次の通りである…

改定常用漢字表の(付)字体についての解説

常用漢字表(1981年10月1日告示)の改定が約30年ぶりに行われ、2010年(平成22)11月30日に改定常用漢字表として告示された。(文化審議会から答申されたのは6月7日。) 改定作業は文化審議会国語分科会の漢字小委員会で行われた。漢字小委員会は平成17年9月…

言葉の意味借用

新聞のテレビ欄に「山形大学で日本語研究、漢字を愛するアメリカ人」とあったので、BSテレ東「ワタシが日本に住む理由」(2月3日放送)を観た。とても面白かったので紹介したい。 番組で紹介されていたのは、山形大学助教のジスク・マシューさんである。マ…

「いただく」の尊敬語化と誤用

平成24(2012)年1月24日の新潟日報「私の視点」欄に、私の次のような文が掲載された。(現在、新潟日報に「私の視点」欄はなくなっている。) 元日の本誌に「日本語よさげ?に拡大中」という特集記事が掲載され、現代を映す新語・略語が紹介されていたが、…

文化審議会答申「敬語の指針」について

「敬語の指針」が文部科学大臣に答申されたのは、平成19(2007)年2月2日である。その「敬語の指針」第3章 敬語の具体的な使い方・第2 敬語の適切な選び方に次のような記述がある。 【8】 駅のアナウンスで「御乗車できません。」と言っているが、この敬語…

筆順について

今、『日本語の現場 』第一集(この本は第一集から第四集まである)という本を読んでいる。読売新聞朝刊で昭和50年(1975年)6月上旬から連載を始めた「日本語の現場」という記事をまとめたものである。昭和50年当時の学校での漢字教育のようすが分かって、…

文法重視が「古文嫌い」の原因なのか

先日MA高校で同僚だった教員と、立ち話をする機会があった。その教員は今年、TU中等学校(中高一貫校)に異動していた。働き方改革は進んでいるかと尋ねると、現場は仕事が減るどころか、ますます忙しくなっているという。TU中等では授業のある平日が…

熱中症

暑い日が続いている。今年は気温は昨年ほど高くないが、湿気が多いせいなのかこの暑さは体に応える。私の部屋は机に向かっていれば朝日が背中に当たるし、夕方には西日が射しこむ。一日中とにかく暑い。エアコンもなく扇風機もないので、椅子に座っているだ…

新元号「令和」・・その示された字形について

4月1日に新元号「令和」が発表された。東大教授の本郷和人氏が三つの理由を挙げてケチをつけたのも、一つの見識を示したものとして好ましい。 その理由とは、次の通りである。 ➀ 「令」は上から下に何か命令する時に使う字。 ② 「巧言令色鮮し仁」という有…

「芋」と「芉」は別の漢字

芋(ウ・いも)と芉(カン・はとむぎのみ)は別の漢字である。この二字は縦画がはねてあるかどうかで別の漢字になる。芋は縦画をはね、芉は縦画をとめる。 平成28年2月29日に文化審議会国語分科会報告「常用漢字表の字体・字形に関する指針」が発表された。…

『方丈記』は随筆ではない

方丈記は随筆ではない、と書いているブログがあった。私も方丈記は随筆ではないと考えている。 もう30年ほど前になるだろうか、方丈記に関する著述のある今成元昭先生(当時、立正大学教授)が、「方丈記は随筆ではない。今後大学入試で方丈記が随筆であると…