より良き教育を求めて ちからのブログ

30年の高校教師の経験から学校・教師・教育について考える

学校・教員を取巻く問題・・非常勤講師

 公立学校では非正規雇用の教員が増えていて、その数は公立学校で5~6人に1人に上るという。私は高校の教員であったが、確かに勤務した高校の全てに常勤の講師と非常勤講師がいた。
 私も定年後、1年再任用で働き、次の年に非常勤講師をした経験がある。再任用で働いたのは平成27年(2015年)である。再任用とは新潟県の場合、給料を約半額にして働かせることである。私は再任用を63歳くらいでは辞めたいと思っていたが、希望すれば65歳まで再任用で働けるものだとばかり思っていた。なぜそう思っていたかといえば、事務長が再任用でずっと働いていたからである。それが教員の私はたった1年で再任用は終わり、翌年は再任用はない、と言われたのがその年の11月のことである。びっくりした。県はそれを、定年退職時に教員には全く知らせなかった。腹が立ったがどうにもならなかった。後に知ったことであるが、65歳まで再任用で働くことができる県もあった。埼玉県がそうである。新潟県は毎年生徒数が減少し、埼玉県は生徒数が減ってはいないことが要因のようだが、定年退職時にそういうことはきちんと説明すべきであろう。新潟県のやり方は実に小狡い。私だけでなく、同じ年に定年退職した教員はほとんどが再任用が1年だけとは知っていなかったと思う。(私は61歳から、満額ではないが年金が出る年齢であったから、再任用は1年だけだったのではないかと思うが、現在はどうなっているのか知らない。)

 さて私は61歳で非常勤講師になった。非常勤講師は授業1コマ2500円程度である。だから時給は2500円となる。1月は約4週間なので授業1コマで月に10000円である。私は12コマ受け持ったから、1月に約120000円の収入になった。これは固定給で、たとえ授業が何かの事情でなくなったとしても収入は変わらなかった。(今は完全な時給制に変わって、授業をした分だけしか給料が払われないところもあるようだが、新潟県が現在どうなっているかは知らない。)受け持てる授業の上限もあって、15コマが上限だったと思う。それは教諭の持ち授業の平均が16コマで、それを超えてはならないという理由からだった。だから最高で収入は1月に約150000円である。これでは非常勤講師の収入でだけで生活する苦しい。
 それでも時給が2500円とは、割のいい仕事だと思う人もいるだろう。しかし実状は最低賃金以下である。というのは1コマ(50分授業。最近は55分の授業である高校も多い。)の授業をするには、当然その倍くらいの時間はしっかりと教材研究をしなければならないからである。(私は時間があったので教材研究に授業時間の2倍以上は時間をかけた。私は国語の教員だったが、現役の頃も少なくても教材研究に授業時間と同じくらいの時間は必要だった。)授業は準備をせずにできるものではない。教材研究はもちろん、必要があればプリントを作らなければならないし、それを印刷もしなければならない。自分では出したくなくても学年共通だからという理由で宿題を出し、それをチェックもしなければならない。定期テストの採点は、1クラス(40人分)につき2時間はかかる。(2時間は私の経験から。もっと時間がかかることもある。)4クラス授業を受け持っていれば8時間である。採点したら集計して成績も付けなければならない。その時間も必要である。さらに私の場合は定期テストの作成もした。非常勤講師はテストの作成をしなくていいと言われることもあるが、私はテストを作成することも好きだったので引き受けた。問題を作成し、解答用紙を作り、模範解答を用意する。そして問題と解答用紙をクラス分印刷する。これだけで7,8時間はかかる。(この時間は少なめである。)こういった時間を総合すれば、授業1コマ2500円では最低賃金にも達しないことがお分かりいただけると思う。要するに非常勤講師はどうにもならないほど低賃金だということである。

 こんな低賃金で責任の重い仕事を引き受けろというはとんでもないことである。非常勤講師を引き受ける人がいなくなって、学校の授業が成立しなくなればいいと私は思う。そうすれば少しは非常勤講師のこを、国も都道府県も考えなければならなくなるだろう。長時間勤務の教諭の労働がブラックであることは漸く知れ渡ってきたが、非常勤講師の待遇はそれ以下で最低なのである。
 非常勤講師の賃金を完全な時給制にするなどもってのほかである。そうでなくても最低賃金以下なのに、さらに非常勤講師を苦しめるつもりなのか。夏休みの期間は非常勤講師はどうやって食べて行けばいいのか。何か言える立場ではないことをいいことに、弱い立場の人間をさらに追い詰める。こんなことは絶対にあってはいけない。今後は非常勤講師はできるだけ減らして教諭を増やして、しかも非常勤講師の待遇も大幅に改善しなければならない。とにかくこの国(日本)は教育にお金をかけなすぎる。いったいどこに金をかけているのか。