より良き教育を求めて ちからのブログ

30年の高校教師の経験から学校・教師・教育について考える

学校の現状

高校の非常勤講師が残業代求める

静岡県立掛川西高校に勤務する非常勤講師・岡野さん(74)が、「実際に教室で授業をする時間以外にも、試験の作成や採点、授業の準備などで月40時間以上を費やし、ほぼ全てが無給となっている」と主張して、3月30日に静岡県教育委員会に残業代の支給を求めて…

給特法の抜本的な見直し

現役高校教員や大学教授などでつくる有志の会が、3月16日に給特法の抜本的な改善を求める80,345筆のネット署名と要望書を文部科学省に提出した。給特法により時間外勤務を命じることができるのは、(1)生徒の実習、(2)学校行事、(3)職員会議、(4)災害…

高校の現状-新潟県と東京都

『教師の仕事がブラック化する本当の理由』(喜入克 草思社)を読んだ。ブラック化する理由についてはなるほどと思ったが、そのことについてはここでは書かない。 私がこの本を読んで一番に感じたことは、新潟県と東京都の高校の違いである。 まず生徒の違い…

学校・教員を取巻く問題・・非常勤講師

公立学校では非正規雇用の教員が増えていて、その数は公立学校で5~6人に1人に上るという。私は高校の教員であったが、確かに勤務した高校の全てに常勤の講師と非常勤講師がいた。 私も定年後、1年再任用で働き、次の年に非常勤講師をした経験がある。再任用…

なぜ細部にこだわる漢字指導がなくならないのか

朝日新聞EduAで、今月の14日、15日、16日と三日連続して、漢字教育について専門家に意見を聞いた記事が配信された。 14日の記事では阿辻哲次氏(日本漢字学会長、京都大学名誉教授)が次のように考えを述べている。 「辞書や教科書に印刷されている通りに書…

教員不足と最低倍率の教員採用試験

学校では若い世代の割合が増えて産休・育休の取得者が増加し、病気の休職者も多くなって、代わりの教員が見つからずに欠員が生じている。その実態をつかもうと文科省は初めて全国調査を実施し、結果を先月31日に公表した。それによると昨年(2021)4月の年…

試験問題漏洩、高校国語の選択科目

昨年12月に奈良県立御所実業高校の男性教諭(57)が、テストで出題が予定されていた問題を事前に生徒に流出させたとして、停職6か月の懲戒処分を受けた。教諭は10月に、2学年の2学期中間テストに出題予定だった世界史の試験問題を同僚から借り、同じ内容の「…

「授業準備1コマ5分」

10月1日にさいたま地裁(石垣陽介裁判長)で、埼玉県の公立小学校教員の田中まさお(仮名)さんが、時間外労働に対して残業代が支払われないのは労働基準法違反だとして、県に未払い賃金の支払いと国家賠償を求めた裁判の判決がでた。請求は棄却されたが、裁…

アクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)

新学習指導要領の目玉の一つが、アクティブ・ラーニングである。「主体的・対話的で深い学び」を目指し、教員が知識を教える一方的な授業ではなく、児童生徒が互いに意見を交わしながら理解を深める授業方法のことを言う。この文部科学省が推薦し、教育界で…

コグトレ

コグトレ(Cognitive Enhancement Training)とは、認知機能強化トレーニングのことである。 皆さんはご存じだろうか。私は宮口幸治氏(立命館大学産業社会学部教授。精神科医、臨床心理士。精神科病院、医療少年院での勤務を経て2016年より現職)の『ケーキ…

改めて「変形労働時間制」を考える

給特法が昨年(2019年)12月に改正され、2021年度より自治体単位で導入可能になるのが、公立学校の「一年単位の変形労働時間制」である。2019年10月1日のブログ(「変形労働時間制」導入は議論する価値もなし)にだいたいのことは書いたが、この3月に岩波ブ…

「いただく」の尊敬語化と誤用

平成24(2012)年1月24日の新潟日報「私の視点」欄に、私の次のような文が掲載された。(現在、新潟日報に「私の視点」欄はなくなっている。) 元日の本誌に「日本語よさげ?に拡大中」という特集記事が掲載され、現代を映す新語・略語が紹介されていたが、…

筆順について

今、『日本語の現場 』第一集(この本は第一集から第四集まである)という本を読んでいる。読売新聞朝刊で昭和50年(1975年)6月上旬から連載を始めた「日本語の現場」という記事をまとめたものである。昭和50年当時の学校での漢字教育のようすが分かって、…

英語民間試験導入見送り

11月1日に萩生田文部科学相が、大学入学共通テストへの英語民間試験の導入について「自信を持って受験生に薦められるシステムになっていない」と述べ、2020年度は見送ると発表した。経済格差や地域格差を広げるなどの批判に対し、十分な対応策が間に合わない…

教員間いじめ ネガティブ・ケイパビリティ

神戸市立東須磨小学校で起きた、教員間いじめが話題になっている。先輩の4人の教員がいずれも20代の教員4人をいじめ、被害者4人の内1人の教員が精神的に不安定になって、先月から休職しているという事件である。 どんな被害を受けたかは、テレビなどで詳しく…

「変形労働時間制」導入は議論する価値もなし

公立学校の教員について、1年単位の変形労働時間制の導入が政府で検討されていて、法改正が進めば2021年春からの導入が可能になる。 「1年単位の変形労働時間制」とは、授業期間の定時を延ばし、その分の振替を夏休み期間等に持っていく制度改革である。 こ…

文法重視が「古文嫌い」の原因なのか

先日MA高校で同僚だった教員と、立ち話をする機会があった。その教員は今年、TU中等学校(中高一貫校)に異動していた。働き方改革は進んでいるかと尋ねると、現場は仕事が減るどころか、ますます忙しくなっているという。TU中等では授業のある平日が…

再チャレンジ高校

前回のブログでぜひ読んでほしいと紹介した本・『ルポ 教育困難校』が、「週刊現代」(8月24・31日号)の佐藤優「名著、再び」で紹介されていた。 佐藤氏は本の内容を紹介した後で、次のように結んでいる。 日本の社会を強化するために、教育困難校に人と金…

教育困難校(底辺校)

先日病院でSI高校の教員と久しぶりに顔を合わせ、話す機会があった。私がSI高校を離れて5年目になる。SI高校は5年前には各学年5クラスであったが、今は2・3学年が4クラス、1学年が3クラスとクラス数が減っている。(2年後には各学年3クラスになる。)…

月120時間超残業の教諭自殺に賠償命令

6月10日に福井地裁は、福井県若狭町の上中中学校の新任教諭だった嶋田友生(ともお)さん(当時27歳)が、2014年に長時間過重労働で自殺したことに対し、校長の責任を認め、町と県に約6530万円の賠償を命じた。 嶋田さんは2014年4月に採用され、学級担任や社…

OECD 国際教員指導環境調査の結果から

2018年に実施したOECD国際教員指導環境調査の結果を、新聞各紙が6月19日、20日に次のような論調で報じている。 日本の教員の長時間勤務は国際的にみても異例であり、1週間の仕事時間は小学校54.4時間、中学校56.0時間で、ともに参加国・地域の中で最長。一方…

教職(高校)を持続可能な仕事にするための改革

私は教職をとてもやりがいのある仕事だと思っている。しかし近年、教員は過重な労働を強いられ、授業では自分のしたいことをする自由も奪われて、教職は実に窮屈で多忙、その日その日の仕事をただこなしていくだけの労働になっている。このような状況は教職…

教職はいつからブラックな労働になったのか(四)  2007.4~2015.3

ここでは2007年(平成19年)4月~2015年(平成27年)3月の8年間を取り上げる。 この8年間、私はSI高校に勤務し、2015年3月に定年退職した。SI高校はM市にある1学年5クラス(全校で15クラス)の専門学科の高校で、世間から低学力校と思われているような…

教職はいつからブラックな労働になったのか(三)  1999.4~2007.3

ここでは1999年(平成11年)4月~2007年(平成19年)3月の8年間を取り上げる。この8年間で高校は完全にブラックな職場になった。2006年度に至って「過労死ライン」を超える時間外労働が常態化する、ブラックな状況が完成する。 私は1999.4から2007.3までの8…

教員評価制度について

私の経験からは、教員評価制度(人事評価制度)は全く形骸化している、と言わざるを得ない。校長(評価者)は義務付けられている、教員(被評価者)との面接もしなければ、教員の授業を見もしなければ、教員に評価を開示してもいない。これが私の経験した実…

小学校教諭、残業代の支払いを求めて提訴

昨年(2018年)9月に、埼玉県の小学校教諭・田中まさお(仮名)氏が残業代の支払いを求めて埼玉県を訴えた。教員はいくら残業しても、残業代はもらえない。給特法により、教員の給与にはあらかじめ給料の月額4%の金額(おおよそ8時間の残業代に相当する金…

灘校の教師・橋本武の『銀の匙』の授業に学ぶ

橋本武(1912~2013)は、灘校で50年間国語を教えた教師である。2005年に教え子の黒岩祐治(現・神奈川県知事)が出版した『恩師の条件』(リヨン社)で、橋本の授業が紹介され脚光を浴びることになったが、橋本武はその時なんと93歳という高齢であった。そ…

『教えるということ』(大村はま著)に学ぶ (三)

大村はまは八潮高校在職のころ、奥田正造先生の毎週木曜の読書会に参加していた。「先生」とは奥田正造先生のことである。 先生の前でかしこまって緊張している私に、先生は急に、「どうだ、大村さんは生徒に好かれているか。」と、お尋ねになったのです。私…

『教えるということ』(大村はま著)に学ぶ (二)

大村はまは『教えるということ』で、次のように述べている。 私は今日、「教えるということ」を題にしました。なぜかと申しますと、「教える」ということをしない先生がたくさんいて、困るからなんです。それでは、「教えない」っていうのはどういうことなん…

『教えるということ』(大村はま著)に学ぶ (一)

大村はま(1906~2005)は、1928年に長野県の諏訪高等女学校(現・長野県立諏訪二葉高等学校)の教師となり、1938年から東京府立第八高等女学校(現・東京都立八潮高等学校)、そして1947年からは東京都内の中学校で教えた国語の教師であり、国語教育の実践…